【ライブエンタメの新世代|デジタルシフト編 #12】音楽は「所有」から「アクセス」へ。配信が塗り替えた音楽業界の地図
音楽ビジネスの「土台」が入れ替わった
音楽業界への就職・転職を考えるとき、まず押さえておきたいのがビジネスモデルの大転換です。 結論から言うと、音楽は「所有するもの」から「アクセスするもの」へと変わり、それに伴って業界の関係図も塗り替わりました。 この記事では、その変化の全体像を整理します。
なぜ変わったのか
かつての音楽ビジネスは、CDやレコードという物理的なパッケージ(フィジカル)を製造し、流通網に乗せて売るモデルでした。 この時代は、製造・流通のインフラを持つ大手レコード会社が圧倒的な影響力を持っていました。
しかし、音楽のデジタルデータ化、そしてSpotifyやApple Musicに代表されるストリーミングの普及により、ユーザーは音楽を「所有」するのではなく、定額で「アクセス」する形へ完全に移行しました。
どれだけ移行したのか
この移行はデータにはっきり表れています。ただし、世界と日本では進み方が大きく違うのがポイントです。
世界:ストリーミングが主役に
IFPIによると、2024年の世界の録音音楽市場は前年比4.8%増の約296億ドルと10年連続で成長しました。 収益に占めるストリーミングの割合は約69%に達し、フィジカル(CD等)は世界全体で約16%まで縮小しています(出典:IFPIGlobal Music Report 2025」)。 世界的には「所有」から「アクセス」への移行は、ほぼ完了したと言える段階です。
日本:移行は進むが、なお「CDが強い」特殊市場
日本でも配信は急成長しています。日本レコード協会によると、2024年の音楽配信売上は1,233億円(前年比106%)で、11年連続の増加・過去最高を更新。 うちストリーミングが1,132億円と、配信売上の91.8%を占めました(出典:日本レコード協会)。 ただし、日本はフィジカルの比率が世界的に見ても際立って高いのが特徴です。 パッケージを含む市場全体では、ストリーミングのシェアは約34%、フィジカルはなお約62%を占めています。世界のフィジカル約16%と比べると、日本のCD文化の根強さが際立ちます。
「移行」の中身も変わり始めた
もっとも、その内訳には変化の兆しがあります。2024年はCDシングルが前年比14%増と健闘した一方、DVD・Blu rayなどの音楽ビデオは24.6%減と大きく落ち込みました。 大物アーティストがライブ映像を動画配信サービスに提供し、パッケージの需要がそちらへ移り始めていることが背景にあります。 結果として、市場全体(音楽ソフト+配信)は3,285億円(前年比97%)の微減となりました(出典:日本レコード協会)。 まとめると、世界はアクセス型がほぼ完成、日本は急速に移行しつつもなおCDが主役という"二重構造"です。 この違いを押さえておくことは、日本市場で働くにせよ、グローバルを狙うにせよ、業界で働くうえで重要な前提になります。
何が起きたか=力関係の変化
「所有」から「アクセス」への移行は、単なるフォーマットの変更ではありません。主導権の移動を伴いました。
・製造・流通インフラを握るレコード会社の相対的な影響力が低下 ・配信プラットフォームとアーティスト自身の役割が拡大 ・「誰が聴いているか」というデータの価値が急上昇
つまり、音楽業界の"地図"そのものが描き直されたのです。この変化を理解しているかどうかは、業界で働くうえでの前提知識になります。
まとめ 音楽は「所有」から「アクセス」へ移行し、音楽業界の地図とデータの価値が塗り替わりました。 次に理解したいのは、この変化がアーティスト自身に何をもたらしたかです。 次回は、レコード会社を通さずにアーティストが自分で世界へ配信できるようになった「ディストリビューションの民主化」を見ていきます。