【ライブエンタメの新世代|デジタルシフト編 #14】SNSが変えた「音楽との出会い方」。TikTok時代のヒットの生まれ方
ヒットの入口が「テレビ」から「スマホの中」へ
前回( 13)では、アーティストがレコード会社を通さず、自分で世界へ楽曲を届けられる「ディストリビューションの民主化」を見ました。 ただ、世界中に配信できることと、実際に楽曲を見つけてもらえることは別の話です。
では、いまリスナーはどこで新しい音楽と出会っているのでしょうか。
結論から言うと、その入口として存在感を高めているのがTikTokやYouTube Shorts、InstagramなどのSNSです。 音楽の「届け方」だけでなく、「発見され方」まで変わり始めています。
なぜSNSが「音楽との出会いの場」になったのか
かつて、新曲を広く知ってもらうには、テレビ、ラジオ、雑誌などのマスメディアや、レコード会社の宣伝力が大きな役割を担っていました。
SNS時代に加わったのが、アルゴリズムによるレコメンドと、ユーザー自身が投稿するUGC(ユーザー生成コンテンツ)です。 まだ名前を知られていないアーティストでも、楽曲を使った動画が広がれば、既存の知名度に関係なく多くの人の画面に届く可能性があります。
TikTokとLuminateが公表した「Music Impact Report 2024」では、2024年にBillboard Global 200へ新たに入った楽曲の84%が、その前にTikTok上でバイラルになっていたと報告されています。 また、TikTokが音楽の発見、ストリーミング、チャートでの成功に影響を与える重要な接点になっていると整理されています。(出典:TikTok)
「宣伝する」から「発見される仕組みをつくる」へ
この変化で重要なのは、プロモーションの主導権が一方向ではなくなったことです。
アーティストやレコード会社が情報を発信し、ファンが受け取るだけではありません。 ファン自身が楽曲を使って動画をつくり、それが別のユーザーに届き、新しい解釈や投稿を生む。 UGCが連鎖することで、ひとつの楽曲が国境を越えて広がることがあります。
SNSを起点に海外へ広がった日本発の楽曲も生まれています。 重要なのは、 海外向けに大きな宣伝を打てるか だけではなく、 世界中のユーザーが参加し、共有したくなる接点をどう設計するか という視点です。
音楽マーケティングは「感覚」だけの仕事ではなくなっている
こうした環境では、音楽マーケティングに求められるスキルも広がります。
・ショート動画やSNSで、楽曲と出会う入口を設計する ・UGCが生まれやすい企画やコミュニケーションを考える ・投稿や再生のデータから、どの層に反応があるかを読み解く ・SNSで生まれた接点を、ストリーミングやライブ、コミュニティへつなげる
つまり、「作品の魅力を伝える力」と「データを見ながら届け方を改善する力」の両方が必要になっています。
他業界の経験も、音楽業界で活かしやすい
この変化は、音楽業界への転職を考える人にとっても重要です。
デジタルマーケティング、SNS運用、CRM、データ分析、コミュニティ運営。 こうした他業界で培われてきたスキルは、いまの音楽・ライブエンターテイメント業界でもそのまま接続しやすい領域です。
音楽との出会いがSNSへ移ったことで、ヒットの生まれ方も、そこで必要とされる仕事も変わっています。
まとめ
音楽は「世界へ配信できる」だけでなく、SNSを通じて世界中の人に「発見される」時代になりました。 次に重要になるのは、そこで生まれた海外のリスナーやファンとの接点を、どう実際の成長につなげていくかです。
次回は、人口減少時代の日本でアーティストがなぜ世界を見るのか、そしてリスナーデータをどのように海外展開やライブへ活かせるのかを見ていきます。