【ライブエンタメの新世代|ベニュー編 #18】「箱」から「体験価値のプラットフォーム」へ。ベニューの収益はどう多層化するのか

「貸す」に加えて、自分たちでも体験をつくる存在へ

前回( 17)では、日本のベニューが長く「貸館」を基本に発展してきた歴史と、ライブの価値が変わるなかで、その仕組みだけでは届きにくい部分が見えてきたことを見ました。 では、貸館の先へ一歩進むとは、具体的に何をすることなのでしょうか。

一言で言えば、会場側が自らリスクをとり、能動的にイベントや体験づくりに関わっていく姿勢への転換です。

借り手(主催者)を迎えるだけでなく、「その場所でどんな素晴らしい体験が生まれるか」に会場側も当事者として関わっていく。 その結果として大きく変わるのが、「収益構造」です。

収益を「利用料だけ」にしない

貸館の収入は、基本的に「あらかじめ決めた利用料」が中心です。 体験価値のプラットフォームへ移るというのは、この収入の入り口を何通りにも増やし、多層化していくことを意味します。

●飲食(フード&ドリンク)の充実 アーティストとコラボした特別メニューや、地元の食材を使った質の高いフードを提供する。 会場に早めに来て飲食を楽しむ時間を、そのまま新しい収益に変えていきます。

●オリジナルグッズや体験の企画 会場でしか買えない限定アイテムや、VIP席専用の待ち合いスペース(ラウンジ)など、「特別な体験」に対して高付加価値なサービスを提供する仕組みを作ります。

●デジタルやデータの活用 イベント当日の体験だけでなく、専用アプリなどを通じて事前のグッズ購入やイベント後のファンコミュニティ運営にまで関わることで、1年中ファンと繋がり続けるビジネスを作ります。

「リスクを分散する」から「一緒に成功を目指す」へ

こうした取り組みを進めるためには、主催者やプロモーターとの関係にも、新しい選択肢が必要になります。

「決まった利用料を受け取る関係」に加えて、チケットや飲食・グッズの売上を互いにシェアするような「共同パートナー」という関係も選べるようにしていくことです。

成功したときの大きなリターンを一緒に分け合える仕組みにすることで、ベニュー側も「どうすればもっとお客さんが喜ぶか」「どうすれば満足度が上がるか」を本気で考えて工夫するようになります。

だからこそ、いま求められるスキル

会場がビジネスの形を広げていくと、そこで必要とされる仕事も一気に広がります。

・魅力的なフードや限定サービスを考える企画力 ・混雑をなくし、快適な空間を提供する店舗運営・オペレーション力 ・アプリやデータを使ってファンとの接点を作るWeb・マーケティング力 ・主催者やパートナー企業と新しいビジネスを作る営業・交渉力

これらはまさに、飲食、アパレル、商業施設、IT、マーケティングなど、エンタメ以外の業界で当たり前に行われている仕事そのものです。

まとめ

ベニューが場所を提供する役割に加えて「最高の体験を生み出すプラットフォーム」へと進化することで、利用料だけに頼らない新しいビジネスの形が生まれます。

会場側が能動的に体験作りに加わることで、ファンにとっても、アーティストにとっても、そして会場にとっても嬉しい「三方良し」の環境が作られていくのです。

次回は、こうした新しい会場ビジネスの土台となる「ライブ体験そのもの」を、データと街という視点から、国内外の先進アリーナの事例で見ていきます。